Concept

物理化学は,「化学現象を物理的方法で解明する」学問だとよく言われます.

我々のグループではそれに加えて,「物理現象を化学的方法で解剖する」という方向を大事にして物理化学の研究を行っています.

 例えば,ある溶液の相変化が溶質-溶媒間の水素結合によって特徴づけられる,ということが物理方程式によって記述できるとします.

この物理方程式が,実際の現象を予測するに足るものかどうかは,溶質-溶媒間水素結合数を変えた系を構築したときに,その系の挙動をちゃんと見通せるかどうかを試せばよいでしょう.

このような検証を可能にするのが,系を構成する分子の構造を自在に変化させることのできる「化学」です.我々は,化学的手法で試料を合成し物理的手法で実験結果を解析し,それをもとに検証・反証例となりうる試料をまた合成するというサイクルで研究を行っています.

研究対象としているのは”やわらかいもの”です.これまでは,合成高分子や界面活性剤,水素結合性の液体,キラリティを有する分子の分光スペクトルの予測など,主に溶液・液体系の研究をしてきました.配座多様性のある分子が溶液中でどのような構造で存在し,溶媒分子とどのように相互作用しているか,ということを分光・合成・計算科学を駆使して解明することが得意です.これまでの研究についてはResearch Topicsにまとめてあり,論文などの研究成果については,勝本個人の研究者情報を見て頂ければわかります.

最近は,溶液中の分子集合体や凝集構造などに興味をもち,徐々に濃厚な溶液からゲルなど巨視的には粘弾性を示す系など,より複雑な”やわらかいもの”を取り扱うようになっています.このような系では,熱力学的平衡を仮定して議論を進めて良いかどうか,ということが問題になってくるので,最近の研究テーマにはヒステリシス準安定状態などがキーワードとして含まれます.

勝本班では「夢中になれる研究」をモットーに,なるべく学生自身が好きなことを好きなだけできる研究環境を整えようと日々努力しています.興味のある方は,是非一度研究室へ遊びに来て下さい.知的好奇心が刺激されちゃうよ.

断機の戒め

欠点を指摘することは,欠点を治すことに比べれば遥かに簡単だ. 不満を述べることは,満足を得るために努力することに比べれば遥かに簡単だ. 他人に非がある考えるのは,自分の非かもしれないと疑うよりも遥かに簡単だ. 困難よりも簡単を選ぶのは,力学法則に似て,それゆえ知性を感じさせない. 知性を感じさせない大学人に,誰が魅力を感じるだろうか. 停滞は誰のせいでもない,自分の力不足と心得よ.